2025年9月21日(日)登壇の「東京勉強会勉強会」にて、個人投資家様より頂戴した主なご質問と当社の回答についてまとめています。なお理解促進のため、一部内容の加筆・修正をしています。
▼ONE MEDICALについて
Q: オンライン診療は収益性が高いと聞きますが、他社が同様の事業に積極的に参入しない理由はなぜでしょうか?その中でエキサイトHDが強みとしているところはどんなところにあるのでしょうか。
勝俣:オンライン診療事業は、他社も全く手掛けてないわけではなく、競合も存在しています。
当社の強みとしては「マーケティング力」にあると考えています。一般的に、医療機関の先生方はウェブマーケティングに関する知見をお持ちでないケースが多く、当社は長年の経験で培ったノウハウを活かし、クリニックを強力にサポートしています。これが当社の大きな強みの一つです。
また、大手の企業は、「1つのシステムで全ての科目を網羅できる」プラットフォーム型を目指している傾向があります。一方で、当社は「科目ごとにきめ細やかなオペレーションを構築する」ことに注力しています。例えばダイエット診療においては、まずカウンセリングを実施し、患者様一人ひとりの悩みに寄り添った商品をご提案するなど、個別最適化された対応を特徴としています。このようなきめ細やかさが、競合他社との差別化につながっていると認識しています。
Q: メディカル事業の今後の成長シナリオについてお聞かせください。利用者の増加、単価の上昇など、どのような要素が成長を牽引するとお考えでしょうか。
勝俣:メディカル事業の成長は、基本的に「各診療科目の売上拡大」と「新たな診療科目の多角的な展開」を柱としています。特に意識しているのは、大手企業との差別化です。大手は、数百億円規模の大きな市場(例えばAGAのように多額のCM広告が投入される市場)に大規模な投資をする傾向があります。
当社は、そのような広告費をかけた体力勝負が必要とされる市場ではなく、年間売上が10億から20億円程度の「ニッチな市場」において、「シェアトップ」を確実に取りに行く戦略を進めています。このような「ニッチトップ」の科目を複数構築していくことで、全体の成長を牽引してまいります。
Q: 第2四半期以降は広告宣伝費を抑制し、利益率を高める方針と伺っていますが、これにより競合他社との競争に敗れ、売上目標未達となるのではないかと懸念がございますが、現状どのように考えていらっしゃいますか。
勝俣:オンライン診療事業において広告宣伝費が非常に重要であることは認識しており、これを抑制することで売上が伸び悩むのではないかという懸念は当然あります。しかしながら広告は単に量だけを投下すれば良いというものではなく、「広告効率」が極めて重要であると考えています。実際に今年に入ってからは、利益を確保しつつ売上を伸ばすという運用を実践しています。直近の例では、前月比で広告費を10%削減したにもかかわらず、売上が10%増加するといった事例もありました。
これは、無作為に広告を広げると無駄が多くなる一方で、ターゲットを絞り込むことで「真に購買意欲の高いお客様」に効率的にアプローチできるためです。したがって、当社が現在取り組んでいるのは、効率の良い広告チャネルに絞ってピンポイントで投資を行い、利益を適切に確保しながら売上を拡大していくという戦略となっています。
Q:資金力と知名度が高い競合に対し、今後どのように勝利していくお考えでしょうか。資金の投下量、宣伝方法、クリニック自体の差別化など、具体的な戦略をお聞かせください。
勝俣:当社が狙う診療科目は、基本的に「高単価」であり、「ニッチ」な市場で、かつ患者様が「すぐに解決したい」という強いニーズがある領域です。ただし、ニッチすぎても事業として成立しづらいため、月商1億円以上、年間市場規模で言えば50億円以上の市場をターゲットとしています。現在ではピルとダイエットがこの条件に合致しています。
AGAのように市場規模は大きいものの、大手企業様が巨額の広告費を投入されるような体力勝負となる市場には、基本的には参入しない方針です。ニッチトップの地位を確立できれば、そのサービスは患者様に早期に想起されるようになります。特にダイエットのように半年以上の継続利用が多い患者様の場合、一度広告費を投下して獲得したお客様は繰り返しサービスを利用されますので、顧客生涯価値(LTV)が非常に高くなります。
そのため、ニッチトップのシェアを獲得し、広告費を最適化できれば、オンラインに特化している当社は20%から30%の利益率を確保できると見込んでいます。このようなニッチトップの診療科目を年間一つずつ創出していくことで、中期経営計画の50億円達成を目指してまいります。
Q: マンジャロを取り扱うオンラインクリニックの運営において、特に工夫されている点や注力されていることはございますでしょうか。
勝俣:マンジャロは現在、ダイエット領域で非常に高い伸びを示している商材ですが、ニーズが非常に高いため、いかに「安定的に供給体制を確立できるか」が極めて重要であると認識しています。そのため広告宣伝はもちろん重要ですが、それ以上に「仕入れルートの確実な確保」や「配送体制の最適化」など、いわゆる「バックエンドの仕組み」をしっかりと整備することに注力しています。現状、マンジャロはニーズが供給を上回る状況にあるため、そのギャップを埋められるよう尽力しているところです。
Q: マンジャロについては競合他社も多数参入していると存じますが、差別化の要因も、先ほどおっしゃられたようなバックエンドの仕組みにあるというイメージでよろしいでしょうか。
勝俣:基本的にオンライン診療事業全体に言えることではございますが、最終的な解決策はやはり処方薬となりますので、全く異なるものを自社で開発するということは容易ではありません。
重要となるのが、「購買体験のスムーズさ」です。具体的には、診察から処方薬のお届けまでがいかに迅速であるか、そして、広告宣伝等を通じて「いかにユーザー様の目に触れる場所にマーケティングができているか」という点が非常に重要になってまいります。当社では、そのような点を一つひとつきめ細やかにチューニングしています。
Q: 広告投資が効率的になったというお話がありましたが、今後は広告よりも、バックエンドの仕組みや患者様の体験のスムーズさに、より一層注力されるというイメージでしょうか?
勝俣:両方に力を入れてまいります。ただし、費用がかかる部分はやはり広告ですので、投資戦略を綿密に検討しながら実行してまいります。事業として差別化を図れるポイントは、バックエンドの仕組みや、患者様の体験のスムーズさといった部分ですので、事業として最も注力しているところです。
Q: 戦略投資方針において、メディカル事業が注力事業と位置づけられていますが、どのような診療科目を想定されていますか?また、提携クリニックの数と、その地域についてもお聞かせください。
勝俣:まず提携クリニックについては、現在、主に1つのクリニックと連携しています。このクリニックは東京にあり、オンラインを通じて全国の患者様を診察し、北海道から沖縄まで全国に薬を届ける体制をとっています。
美容医療の科目についてですが、実は非常に多岐にわたる細かい科目があります。例えば最近では「美容内服薬」といったものや、美肌目的のニキビ治療、美白効果のある医療用サプリメント、他にも美容とは少し異なりますが、水虫の治療や花粉症のオンライン診療などもあります。このような比較的小規模な科目が多数存在し、それぞれが10億円から20億円程度の市場規模を持っていることが特徴となります。最も市場規模が大きいのは、ダイエットやアンチエイジング系の領域で、まずはそういったところから着手している状況です。
Q: サービス全体のイメージについて漠然としている部分があります。SaaSのようなものを提供しながら、包括的にサービスを提供するというイメージでよろしいでしょうか。
勝俣:SaaSではなく、「事業そのものを構築し、事業開発を共に推進している」という表現がより適切と思っております。
具体的なイメージとしては、まずユーザー向けのランディングページ(LP)を制作し、それを広告に掲載します。広告をご覧になった方がLINEアカウントに遷移し、そのLINEアカウント上で当社が自動で問診を行ったり、必要書類の提出、個人情報の登録などを促したりします。その後、ビデオ通話によるオンライン診療を実施するという流れを構築しています。診察が完了すると、クリニック様からお薬が発送されるというオペレーションを全体として構築・提供している形です。したがって、SaaSというよりも、医療機関のライセンスを正式にお持ちのクリニック様と提携し、共に事業を創り上げていく。いわば、ライセンスをお持ちの医療機関様のDX化を全面的に支援している、というイメージに近いかとお考え下さい。
Q: ビジネスモデルとしてはレベニューシェアのような形で展開されているのでしょうか?
勝俣:レベニューシェアという形ではなく、「広告収入」という形でいただいています。
Q: マンジャロについて、一部の利用者においては副作用が発生するケースがあることや、そもそも健康な方への使用について懸念があるという意見も伺っています。この点に関してどのようなリスク管理をされていらっしゃいますか。
勝俣:診察に関しては提携クリニックの先生方に責任を持ってご担当いただいています。その上で、事前段階で患者様に問診票をご提出いただき、例えばマンジャロの場合、BMIなどの基準を設け、一定以下の患者様には処方を行わないといったルールを定めています。このように、過剰なリスクを負わないよう運営を行っています。
Q: メディカル事業は女性向けの商材展開が多いように見受けられますが、ED(勃起不全)のオンライン診療も今後予定されていらっしゃいますか?
勝俣:ED診療につきましても、もちろん検討は進めています。男性・女性問わず、幅広いニーズに対応できるよう、幅広く検討している状況です。
Q: 1つのクリニックと契約されているとのことですが、その点がリスクになるといったことは考えられますでしょうか?
石井:現状、医師法をはじめとする関係法令やガイドラインに基づき運営していますので、法的なリスクはないと認識しています。当社は上場企業ですので、メディカル事業を取得する際にも、そういった点は厳密に精査した上で事業を進めています。
Q: ダイエットの場合、目標体重達成後に数ヶ月など短期間でサービスを離脱されるイメージがあります。クロスセルなどを通じて、継続的に別の商材を販売されるご計画はありますでしょうか?そのような場合、どのような商材を想定されていらっしゃるでしょうか。LTV(顧客生涯価値)を高める方法についてもお聞かせいただきたいです。
勝俣:現在まさに推進している施策があります。おっしゃる通り特にダイエットに関しては、最初の3ヶ月から半年くらいで体重減少が達成できた段階で、一旦サービスを休止される方も多くいらっしゃいます。
一方で実際に運営してみて分かったことですが、サービスを中止された後、再び体重が戻ってしまい、再度ご利用を希望される方も少なくありません。やはり医薬品を用いて体重を減らした後、急に利用をやめて通常の生活に戻るとリバウンドしてしまうため、すぐにサービスに戻ってこられる傾向があります。
そういったファインディングスから、半年間マンジャロをご利用いただいた後、より効果が穏やかな内服薬に切り替えて継続的にご利用いただくといった施策を検討しています。これにより、患者様の離脱を防ぎつつ、売上をストック型で継続的に積み上げていくことを狙えると考えており、現在準備を進めている状況です。
Q: メディカル事業の月次開示を行う予定はありませんか。
石井:現状、月次の売上開示は行っておりません。広告費を投下した際には売上が伸びる一方、利益を確保したい際には広告費を抑制して利益を出すといった運用も行います。そのため、売上だけを開示してしまうと、かえって情報がミスリードに繋がる可能性もあります。そのような理由から、足元では月次開示は考えておりません。
ただし、第1四半期の決算発表でも実施いたしましたように、決算説明資料の中では、月次の動向について、当社の意図が正しく伝わる形でご説明をさせて頂きたいと考えています。
▼エキサイトHD全体について
Q:複数事業を運営する事により株価影響(コングロマリットディスカウント)をどのようにお考えでしょうか?
石井:当社としては中長期的な企業価値向上を最優先に考えています。インターネット企業はサービスのライフサイクルが非常に速く、成長期から衰退期までのサイクルが数年で訪れることもございます。そのため、単一の事業のみに依存する「一本足打法」は、中長期的に見るとリスクが高いと考えています。一方で、事業を過度に広げすぎると、リソースが分散したり、ディスカウントが過剰にかかったりする懸念もございますので、現状では3~4つの事業ポートフォリオを維持することが、中長期的な視点において最も適切であると考えています。
そのうえで、足元ではオンライン診療事業が、買収当初の想定を上回るペースで順調に成長しており、確かな手応えを感じ、将来的な利益創出も大きく期待できる状況になってきております。つきましては、中期経営計画における増収増益達成を目指しつつも、メディカル事業へさらに投資を集中させ、一時的に利益を先行投資に回すという選択肢もあると考えています。今後、第2四半期の決算発表も控えていますので、個人投資家の皆様、機関投資家の皆様との対話を通じて、どのような方針が最も株価向上に繋がり、皆様にご納得いただけるのかを検討してまいりたいと存じます。メディカル事業への傾注も選択肢として検討していく所存です。
Q: 一部の優秀な投資家界隈では、石井CFOは下方修正を出さないことで有名と伺っています。現在、広告を全力で投下している状況と拝察しますが、第2四半期以降も全力で投下し、過去最高の利益を狙うのか、それとも広告費を抑えてくるのか。もし後者であれば、正直なところ「もったいない」と感じてしまいます。率直なところ、心中では葛藤があるのでしょうか。
石井:私と西條もやはり一度発表した業績予想は、何としても達成したいという強い思いがあります。当社は2023年に上場し、まだ2年という若い会社です。投資家の皆様からの信頼は、やはり業績予想を達成することによって得られるものであり、それがあってこそ、将来に向けた大きな投資が可能になると考えています。したがって、基本的には必達を目指していくというのが、根底にあります。
一方で、ご指摘の通りメディカル事業、特にダイエットが足元では非常に伸びています。来期に向けても次の診療科目を仕込んでいきたいと考えており、利益を一時的に犠牲にしてでも、さらに広告費を投下したいという気持ちもあります。
おそらく、その方が売上も大きく伸びるでしょうし、EXCITE300(時価総額300億円)を目指す上では、将来的な利益、ここに記載の通り利益率の高いモデルですので、LTV(顧客生涯価値)が高い、継続的に購入していただける診療科目が立ち上がれば、私自身も長年数字を扱ってきていますので、非常に大きな利益が出る手応えがあります。
その為、正直なところ、この点についてはかなり葛藤を抱えている、というのが今の率直な気持ちです。
Q: このXTechとエキサイトホールディングスの関係性が不明瞭であるため、その点をお教えいただけますでしょうか。
西條:元々は、XTechというホールディングスカンパニーがあり、そこから会社設立や企業再生、投資を行うといったコンセプトで経営を進めてまいりました。しかしながら、エキサイトを買収(TOB)するための会社(XTech HP)を設立し、再上場する際に、XTechグループ傘下としてではなく、利害関係を排除するためエキサイト単独での上場を選択しました。そのため、現在はXTechとは分断しており、エキサイトホールディングスとして独立しています。
XTech傘下にある様々な子会社の経営からは基本的に手を引いており、現在は各子会社の社長たちが経営を担っています。そちらには私は関与しないようにしています。
Q:多岐にわたる事業を展開されていますが、それぞれの事業間にどのようなシナジーがあるのでしょうか?M&Aを実施する際の基準として、シナジーを含め、どのような業種を選定し、バリュエーションをどのように判断されていますか?
石井:複数の事業間には明確なシナジーがそれほど多くはないというのが実情です。
サービスのライフサイクルが非常に速いインターネット業界において、中核事業に付随するシナジーばかりに依存していると、その中核事業が縮小した際、全てのシナジーを失うというリスクがあります。そのため、特定の事業に紐づくシナジーのみに頼ることは危険であると考えており、当社は複数の事業を持つ戦略をとっています。
重要なのは、「ビジネスモデルが異なる事業を複数持つ」こと。例えば3つの事業のうち1つが不調であっても、ビジネスモデルや顧客層が異なれば、他の事業が好調であるという状況も生まれます。このように、ビジネスモデルの異なる事業を複数持つことが、現在非常に重要であると認識しています。
▼その他
Q: メディアサービスについて直近苦戦されており、広告単価が下落しているとのお話でしたが、そもそも何が原因でそのような状況に至ったのか、そしてどのような対策を講じていらっしゃるのか、お聞かせいただけますでしょうか。
石井:メディア事業に関しましては、今年の4月以降、広告単価が概ね3月比で30%下落しました。この原因としましては、Googleのコアアップデートによる影響を非常に大きく受けています。
Googleは通常、年間で2回程度、大きなアップデート、すなわち検索ロジックの変更を実施します。加えて広告の価値、つまり広告単価自体を変更するケースもあります。今回4月に発生した事象は、当社のページビューの約70%を占めるウーマンエキサイトのコミックエッセイにおいて、Googleがそのコンテンツの「価値」を非常に低く評価したことに起因しており、結果として4月以降、広告単価が30%下落しました。
この件に関しましては、詳細な施策については申し上げにくい部分もありますが、様々な対策を講じた結果、現在はほぼ損益分岐点まで回復させています。