2025.5.31

お知らせ

神戸投資勉強会 Q&A(2025年5月24日)

2025年5月24日(土)登壇の「神戸投資勉強会」にて、個人投資家様より頂戴した主なご質問と当社の回答についてまとめています。なお理解促進のため、一部内容の加筆・修正をしています。

■ONE MEDICALについて

Q :他の大手医療DX企業ではなくエキサイトホールディングスに参画した主な理由は何ですか?

勝俣:弊社は事業立ち上げには強みがありますが、そこからスケールしていく成長フェーズでは、上場企業などと組んだほうが良いと感じていました。「医療に特化した会社」ではなく、マーケティングを基軸に様々な事業を展開する中で医療事業が生まれた、というスタンスです。

事業創出の思想や方向性がエキサイト、特に西條、石井の考え方と非常に近しく、また西條がこれまで手掛けてこられた事業とも親和性が高かったため、共に大きな成長が期待できると判断し参画に至りました。医療専門企業でないからこそ、逆にこういった形での連携が実現できたと思っています。今後は、これをひとつの成功事例として、エキサイトホールディングスとしてさらに別事業にも展開していきたいと考えています。

Q :AGA(男性型脱毛症)治療市場への取り組み方針を教えてください。

勝俣:現在、AGA治療市場は大手企業による大規模な広告投資がなされており、競争が激化しています。
弊社としては、正面からこの市場で競争するよりも、他に有望な専門領域(例:スキンケア、ダイエット等)があり、そちらを優先して開拓する方針です。

Q :肥満症治療薬(マンジャロ等)の市場動向と、貴社の取り扱いについて教えてください。

勝俣:肥満症治療薬、例えば「マンジャロ」については、当初糖尿病治療薬として開発されましたが、肥満症への効果も注目されています。米国ではその需要に対応する形で、同一成分で肥満症を適応とする「ゼップバウンド」が承認されるなど、市場ニーズに応じた動きが見られます。以前までは、糖尿病の薬をダイエット目的で利用することに対する声もありましたが、今後は「ダイエット目的」を前提とした市場展開が進む見込みで、供給課題についても徐々に改善されていくと考えています。

Q :オンライン診療事業のビジネスモデルと、医薬品の個人輸入との差別化はどのように図っていますか?

勝俣:弊社のオンライン診療は、提携クリニックへの送客に対し、診療内容に応じた手数料をいただくビジネスモデルです。
個人輸入との差別化としては、確かに個人輸入で入手可能な薬もありますが、我々が注力している領域は、個人輸入では対応が難しいものが多いです。たとえばアフターピルは性行為後3日以内に服用が必要で、個人輸入だと間に合いません。また、性感染症のように早急な治療が求められるものもクリニックの優位性があります。
加えて、マンジャロのような冷蔵保存が必要な薬は個人輸入が現実的ではありませんし、クリニックでも仕入れが難しい状況です。信頼性や即時性、処方後の相談体制などを重視する層に向けたサービス設計をしており、実際に個人輸入を行う層はごく一部のマイノリティに限られます。

Q :オンライン診療事業の成長後、リアルクリニック展開の計画はありますか?その際の戦略や時間軸について教えてください。

勝俣:はい。リアル店舗展開は、オンライン診療の利便性を補完し、緊急性の高いニーズへの対応やオンラインではリーチできない顧客層へのアプローチが可能になると考えており、準備を進めています。まずは都心で展開し、うまくいけば地方都市にも拡大していきたいと考えています。オンラインで獲得したユーザーをリアル店舗に誘導し、逆にリアル店舗で接点を持ったユーザーが次回以降オンラインで受診するという相互送客の仕組みも視野に入れています。
ただし、まだ数値目標やタイムラインは開示できる段階ではありません。現在は試験展開を行っており、今後計画に組み込んでいく予定です。

Q :精神科領域へのオンライン診療参入についてのお考えは?

勝俣:精神科領域は事業可能性を感じるものの、オンライン診療での実施にはハードルがあります。特に向精神薬などの処方には厳格な規制があり、初診からのオンライン処方が難しい場合があります。そのため、現時点では慎重に検討を進めており、どのような形で貢献できるか模索中です。

Q :米国の遠隔医療企業hims&hers社と貴社のビジネスモデルは類似していますか?

勝俣:はい、コンセプトやビジネスモデルの多くは非常に近いものがあると考えています。

Q :米国の薬価引き下げ政策や為替、物流費の変動は事業にどのような影響を与えていますか?

勝俣:現在、米国から直接輸入する医薬品は限定的であり、自由診療が中心のため価格設定の自由度が高いことから、現時点での直接的な大きな影響は想定していません。薬価が下落すれば仕入れコスト低減の可能性もあります。医薬品はインドや台湾などグローバルに調達しています。

■会社全体の方針について

Q :事業ポートフォリオの整理(売却・撤退)について、どのような方針ですか?

西條:経営資源には限りがありますので、事業の撤退や売却は常に選択肢として考慮しています。成長性が低い事業でも、キャッシュカウとして先行投資の原資となっている場合は維持しますが、将来的には事業の入れ替えも積極的に検討します。
事業ポートフォリオが多岐にわたることによる分かりにくさやディスカウントリスクは認識しており、オンライン診療事業等の成長により財務基盤が強化されれば、より柔軟なアセットの入れ替えが可能になると考えています。

Q :参考にしている企業モデルや、今後の経営方針のイメージについて教えてください。

西條:私と石井が在籍していましたサイバーエージェントをはじめ、ミクシィ、DeNAなどを参考にしています。これらの企業は、多角的に新規事業を創出し、その中から大きな柱となる事業を育て上げています。弊社も同様に、多角的な経営を目指しつつ、早期に太い事業の柱を確立し、IR的にも分かりやすい形で成長をアピールしていきたいと考えています。

Q :今後のM&A戦略について、財務的な実現可能性も含めて教えてください。

石井:M&Aには引き続き積極的ですが、具体的な計画には織り込んでいません。ONE MEDICALのM&Aのように、対象企業のキャッシュや将来キャッシュフローを評価し、資金調達を行うことで、財務的に大きな負担を避けつつ成長機会を追求します。一方で、先行投資で多額の赤字を出すようなハイリスクな案件は、M&A・自社新規事業共に慎重に判断します。

Q :中期経営計画に、M&Aの要素はどの程度織り込まれていますか

石井:現時点では、M&Aは全く織り込んでいません。ただし、3年間の中期経営計画期間中に有望な案件があれば、検討する可能性はあります。その場合も、財務規律を重視し、リスクをコントロールした上で実行します。

Q :AI技術の発展は、新規事業創出にどのような影響を与えていますか?

西條:AI技術の進化により、少人数・低コストでのサービス開発が可能になり、「1人ユニコーン」のような事例も期待されます。従来より少ないリソースで新規事業を立ち上げられるチャンスが増えており、社員からもAIを活用したアイデアが生まれています。有望なプロダクトは積極的に世に出していく方針です。

■メディア・プラットフォーム事業について

Q :今回、メディアの広告単価が下がった影響で弱気な見通しを出されていました。この広告単価の下落は一時的なものでしょうか。それとも、今後もさらに下がっていく可能性があるのでしょうか。

石井:弊社のメディア収益の主軸はGoogle等のアドネットワーク広告です。広告ポリシーや検索アルゴリズムの変更により、広告単価やページビューは変動しやすい状況となっています。具体的には2025年4月以降、広告単価が20〜30%下落しており、これを戻すための施策を講じている最中です。

市場全体としても広告出稿がやや鈍化しており、広告代理店も苦戦していると聞いています。そのため、我々としては下限を「影響額2億円」と見積もり、それ以上の悪化は抑えたいと考えています。足元、AIを活用した記事制作を効率化し、記事量を増やすことでPVを底上げしながら、単価下落をカバーを進めており、今期中に一定の効果が出ることを期待しているという状況です。

Q :TOB後のメディア事業の位置づけと、今後の事業ポートフォリオにおける影響について説明してください。

石井:メディア事業はGoogleなどの動向に大きく左右されるため、TOB後は縮小均衡方針を採ってきました。コントロールの難しい事業を主力とすることのリスクを鑑み、売上規模・構成比率共に縮小させています。
今期(2025年3月期)の売上高構成比は約6~7%まで低下する見込みで、来期以降、メディア事業が全社業績に与える影響は軽微になる見通しです。これにより、より安定的成長が可能な事業ポートフォリオへの転換を進めます。

Q :電話占いなどのカウンセリング事業の具体的な成長目標は?

石井:中期経営計画では、「カウンセリング・メディア他」セグメント全体でCAGR(年間平均成長率)10%程の成長を見込んでいます。電話占い単体では現在業界5位以内と認識しており、トップ企業(売上40億円規模)との差を鑑みても、年率10%成長を継続することで30億~40億円規模への成長は十分可能だと考えています。

■その他

Q :繰越欠損金の状況について教えてください

石井:子会社には一部ありまして、エキサイトも過去にはございました。節税策は常に検討しており、これに関しても有効に活用しています。

Q :エキサイトホールディングスのブランドロゴと社名についての考え方をお聞かせください。

西條:元親会社の伊藤忠商事株式会社がライセンスを取得していたのですが、株式取得のタイミングで我々が取得させていただいています。一定層には認知度がありますが、若い世代には馴染みが薄い面もあると認識しています。社名変更も検討しましたが、現時点では既存の社名のもとで企業イメージを刷新し、企業価値向上に努める方針です。