2025年2月21日(金)登壇の「湘南投資勉強会」にて、個人投資家様より頂戴した主なご質問と当社の回答についてまとめています。なお理解促進のため、一部内容の加筆・修正をしています。
■業績について
Q :今期前年比で1.7億円の広告費を増加させていますが、来期も積極的に広告費を投下する方針でしょうか(ONE MEDICAL社分を除く)。
石井:今期、具体的に広告費を増やしているのはカウンセリング事業となっていまして、1.7億円の広告費を増加させた分の利益が減ったという形になっています。来期に関しては、前期までの水準に戻すという方針になりますので、来期、引き続きカウンセリング事業で積極的に広告を投資するということはございません。ですので、来期以降に関してはカウンセリングの利益も戻していくという考えでいます。
Q:M&A関連費用が3,600万円発生していますが、来期以降は発生しない認識でよいでしょうか。
石井:仰る通り、今期発生している3,600万円に関しましてはまさにONE MEDICALとNAPBIZという会社を株式取得した費用となります。当然一過性の費用となりますので来期以降は発生しないというところになります。
ですがもし来期、新たにM&Aをする場合は、デューデリジェンス費用であったり、仲介費用が発生する可能性はございます。
Q :SaaS・DX事業の営業利益は、どの時点での黒字化を目指していますか。
石井:こちらに関しては、現在赤字が徐々に縮小している状況となっています。来期は若干赤字は残る形で計画としては立てていまして、再来期(2027年3月期)黒字化をするという計画となっています。
Q:ONE MEDICAL社の積極的な広告費投入にもかかわらず、ひと月あたり4,000万円のEBITDAが出ているとのことですが、来期も同様に広告費を投入しながら、EBITDAも順調に成長していく計画でしょうか。
石井:やはりオンライン診療の成長性を高めたいというところで、積極的な広告費投入というのは行っていきたいと思っています。しかしながら、売上高とEBITDAの両方を成長させていくという方針でありますので、大きく減益させるというようなことは今のところは考えていません。
Q :事業ごとのROIC(投下資本利益率)はどの程度でしょうか。
石井:株主資本を事業別に分けるというのは困難というところがありますので、会社全体ということでご回答させていただきます。前期24年3月期に関しては約9%と、一般的な目安が7%と言われていますのでそれを超えるような水準というところになっています。
今期につきましては先行投資期というところもありまして、営業利益が若干下がること、あとはONE MEDICALの株式取得に伴う借り入れの増加がありましたので、今期のROICというのは悪化していますが、来期以降の利益というのはまた元に戻していきますので、来期以降は改善していくと考えています。
Q:今期4Qで引っ越し費用が発生する計画ですが、来期も同費用が発生しますでしょうか。発生する場合、どの程度の費用を見込んでいますでしょうか。
石井:現在精査を行っているところです。資産計上すべきものと費用計上すべきものについて、確認が必要なため、精査後に来期の業績に織り込む予定です。しかし、現時点では多額の金額にはならないと考えています。
西條:麻布台ヒルズに引っ越すということで、贅沢なんじゃないかという意見もあるかと思いますが、これは私がお世話になっている先輩経営者の某上場企業の代表から「西條君は引っ越したら業績も株価も上がるよ」という後押しもございまして、移転を決めました。現在、南麻布にある約600坪の広さの非常に良い環境のオフィスにいますが、コロナ禍以降出社を調整し、ハイブリッド型で運営しています。そのため現状のオフィスは少し広すぎるという感覚があり、また人材面におきましても大量採用というよりは、堅実に優秀な人材を採用していく方針ですので、今後は効率的に経営を進めるために、広さを見直すことにしました。麻布台ヒルズへの移転後は、現在のオフィスよりも面積を20%〜25%程度縮小する予定です。確かに坪単価や家賃は上がりますが、それでも大幅な増加はありませんので、コストの面でも十分にバランスを取ることができると考えています。
また、移転に際しては従業員のモチベーション向上も重視しており、最低限の内装や重機の入れ替えなどを行っていますが、これはごく一般的なコスト発生となります。移転まであと2ヶ月ほどですが、従業員の士気も高まっており、先輩経営者の方のアドバイス通り、業績や株価の向上に繋がるよう努力していきたいと思っています。
■中期経営計画・今後の成長戦略について
Q :最終年度の数字を中期経営計画では発表されていますが、2026年3月期、2027年3月期のガイダンスは、大体今期と最終年度の平均値辺りをガイダンスとして考えられておられるのでしょうか。
石井:詳細な数値はお答えできないですけれども、ご質問いただいている通り、平均値あたりというところで毎期着実に成長させる前提で計画しています。ですので、適切な投資をしながら、売上・利益も着実に上げていくという形で考えています。
Q :ご説明の中で、西條社長が積み上げで中期計画のこの数値を出したというお話をされていましたが、その積み上げというところについて、もう少し詳しく教えていただけないでしょうか。
石井:今回の中期経営計画でお示ししている通り、事業別のCAGR(年間平均成長率)を出しています。この成長率の根拠についてですが、例えばカウンセリングやメディア事業は、過去においても約10%の成長を続けてきましたので、これまでの成長率を基に算出しています。そのため、大きなブレはないと考えています。
プラットフォーム事業、ブロードバンド事業につきましては、今回は1%の成長を見込んでいます。これまでも約3%の成長を続けてきましたが、現在の市場環境を踏まえると、市場全体の成長率はおおよそ2%弱と予想されています。そのため、あまり積極的に成長を見込むことはせず、市場の成長率にやや弱めの見通しを反映させています。
オンライン診療につきましては、8.5億円から50億円という大きな成長が見込まれているように見えるかもしれませんが、実際には現在、オンライン診療は年間で20数億円規模に達しており、すでに十分な成長が見られています。このため、数値としては大きく見えるかもしれませんが、既存の実績をベースに、過度な成長予測はせずに現実的に見込んでいるという形になります。
Q :中期経営計画の数字について堅実な数字であるとおっしゃられておりました。もう少し詳細にご教示ください。
石井:過去の成長率を踏まえた上で堅実に予測を立てていますので、当然アップサイドの余地は十分にあると考えています。オンライン診療につきましてもまだ成長の余力があり、またその成長を加速させたいと考えていますので、内部的には現在出しています数字以上のところを目標にしています。
またこの計画に関しましては、現行の事業に基づくオーガニックの成長のみを見込んでいますが、もしM&Aがあった場合には、それがアップサイドとして加わると考えています。
西條:我々がONE MEDICAL社をM&Aした背景にも関係しているのですが、経営陣が非常にアグレッシブであり、目標値も高く、言うなれば鼻息が荒い若者であると。今回の中期経営計画を作成する際も、かなりアグレッシブな数字というのも、実はございましたが、我々は上場企業として計画をしっかり守っていかなければならないため、現実的な数字に落とし込みました。
先ほど石井からも説明がありましたが、実際にはこの事業を立ち上げてからまだ2年程度で、しかも最初の1年弱はリサーチや準備期間も含まれており、この短期間で20億円以上の売上を達成してきています。この実績を踏まえた上で、今後3年でその売上を2.5倍にするという目標は、現実的に見ても不可能ではないと考えています。慎重に見積もったとしても十分に達成可能な数字だと認識しています。
経営陣は各診療科目ごとの売上規模に現実感を持っており、今後その科目数を増やすことで売上を積み上げていくということですので、ある1診療科目が流行っていて、これだけで30億円行きます、という話はないんですね。こうした理由から、現時点での計画は十分に現実的で堅実だと考えています。
Q :2028年のオンライン診療売上計画5,000百万に対する営業利益率の想定は何%でしょうか。
石井:我々の目標としているのはEBITDAベースで見ていますため、EBITDAでお答えします。オンライン診療に関しましては、おおよそ20%程度の利益率を見込んでいます。先ほどの資料にも記載されています通り、オンライン診療は利益率が高い事業ですので、実際にはもう少し利益率を高められると考えていますが、計画上では約20%の利益率を見込んでいるという状況です。
Q :現在M&Aを検討している企業はありますでしょうか。特に大きいM&Aをされる場合、増資や資金調達が必要になるのではないかと考えていますため、資金面も含めた来期以降のM&A戦略について教えてください。
石井:M&Aに関しましては、ありがたいことに昨年4社買収いただいたこともありまして、仲介会社であったり、様々なところから案件自体はかなり持ち込まれているという状況にあります。現在、具体的にM&Aを進めているというところは足元はないですが、今後につきましては、やはりONE MEDICALのような市場の拡大というのが将来的に見込まれて、その市場成長を取り込めるポテンシャルのある会社というものがあれば、そこは積極的にM&Aを行っていきたい思っています。
また懸念されている財務面につきまして、今回ONE MEDICALのM&Aは借入でやっていますけれども、ここはまだ借入の余力はございますし、時価総額が上がれば増資ということも考えられます。財政状況を踏まえて検討をしていきます。
西條:のれんが大量に発生するようないわゆる割高な案件を買いに行くべきかどうかについては、現在のエキサイトの時価総額を考えると、少し時期尚早だと考えています。
確かに、のれんが大量に発生するということは、将来性のある良いM&A案件であるということでもあります。ですが現段階では、私たちがそれをやるような規模や体力ではないと考えています。
逆に、割安でしっかりしたキャッシュフローが見込める案件であれば、ファイナンスがついてきますので、必ずしも増資を行わなくても、借入などで資金調達が可能です。今後は、このようなM&A案件を慎重に選定し、実行していく形になると考えています。
Q :新規事業がFanGrowth、KUROTEN以来増えていないと思いますが、今後の新規事業のご予定はございますでしょうか。
石井:新規事業については現在、検討を進めています。先ほど西條からもありましたが、上場前後は新規事業の立ち上げが難しいという状況がありましたので、来期以降は新たな事業を開始したいと考えています。
西條:スタートアップ業界も会社によっては大きな資金調達をする時代ですので、私たちもそうですが、さらに大きな上場企業であっても、新規事業1つ1つに数十億円という資金で立ち上げてくるスタートアップと競争するのは容易ではありません。また上場後は売上と利益を増やしながらということで考えますと、PL上で大きな投資はできないというところもありますので、新規事業は毎週のように議論しつつ、どういう形の新規事業であれば現実的に立ち上げられるのかというところで議論をしています。
やはり最近ですとAI領域、例えばSaaS業界全体においてもAIのところでうまくデータを活用すれば、創り方によっては既存のSaaSプレイヤーを少ない開発コストやマーケティングコストで追い越せる可能性があるといったアイデアも出ています。
いくつかの事業案を検討しながら、先ほどご説明した中長期計画に悪影響が出ない範囲で新規事業に挑戦していく考えです。
Q:久しぶりに御社の説明会に参加し、オンライン診療が大きな事業ウエイトになっていることに驚きました。企業価値を考えたとき他の事業とくにキャッシュカウな部門があるのでいわゆるコングロマリットディスカウントが起きていると思えます。これを解消していただくような対策を検討していただけないでしょうか。
石井:ありがとうございます。仰る通りコングロマリットディスカウントが存在することは理解しています。しかしながら、中長期的な成長を考えた場合、単一事業や少数事業に依存することは逆にリスクが高いと考えています。
特にネット業界では、プロダクトのライフサイクルが非常に早く、成長のピークを迎えるとその後は鈍化、シュリンクしていく可能性もあるため、会社としてはそのリスクを抱えることになります。ですので複数事業、3つから4つくらいのセグメントを持っておくということは我々としては必要だと考えています。ただし事業の多様化にも限度があり、広げすぎは逆効果になる可能性があります。例えば10以上のセグメントに分散させることは、かえってマイナスに働くと考えていますため、3つから4つの事業ポートフォリオでの運営を引き続き目指していきたいと考えています。
Q:先程、大量採用は行わないという話がございましたが、売上達成のために人員数がボトルネックになるということは考えなくて良いのでしょうか。
石井:まずオンライン診療に関しては、大きく人員を増やさなくても成長できるビジネスモデルとなっています。ですので高い収益性を確保できているといったところです。
カウンセリング事業およびメディア事業に関しても、年率10%程度の成長が見込まれており、こちらも大きな人員増加は必要なく、現在の人員で十分に目標を達成できると考えています。ブロードバンド事業も1%の成長を見込んでおり、特段の増員は不要という状況です。
唯一、人員増加を計画しているのはSaaS DX事業です。特に今期はFanGrowthが先行投資の段階にあるため、かなりの人数を増加させました。そのため、現時点では赤字が残っていますが、今後は成長に応じて人員を増やしていく予定です。具体的には、今後30%の成長を目指しており、それに伴って適切な人数を増加させていく形になります。
まとめますと、SaaS DX事業以外の分野では、大きな人員増加なしに成長が見込めるという状況です。
■ONE MEDICALについて
Q:ONE MEDICALはエキサイトに買収される前もかなり利益が出ていて、成長性もあったと思うのですが、なぜエキサイトに株式を売って傘下に入ることを決めたのでしょうか。
勝俣:大きく2つありまして、1つは外部から資金調達をしている会社でもありましたので、株主の皆様への筋を通し、リターンを返すというのは経営者としてはしっかりやっていきたいと、上場やM&Aを確実に実行したいという思いがありました。ちょうどメディア事業からオンライン診療に転換していく中で、西條さん、石井さんとお会いする機会があり、ご一緒にできるタイミングというのもありまして、合意を決意しました。
もう1つはやはり個人的なところもありまして、私も共同創業者の金田も長年自分たちでずっと会社をやってきまして、個人的には20代の間に西條さんのような経営者の下で経営するという環境であったり、こういった形で資本市場とアクセスをしながら経営していくというのも、経験も含めて魅力に感じたというのはあります。
Q:オンライン診療の成長率80%とのことですが、競合との差別化ポイント、また成長率81%の根拠となる資料などがございましたらあわせてご教示ください。
石井:ONE MEDICALは2022年11月からスタートし、約2年間で年間20数億円規模に成長していますため、この足元の売上実績がベースとなっています。さらに、オンライン診療の普及は今後ますます進んでいくと考えていますため、一見81%の成長率は非常に大きく感じられるかもしれませんが、これまでの成長実績を基に、率ではなく金額で予測を立てており、無理のない数字だとご理解いただければと思います。
勝俣:競合との差別化についてですが、まず競合でいいますとDMMさんやクリニックフォアさんなどが台頭してきています。ですが当社が取り組んでいる診療科目は、いわゆる広告を大量に投下して長い時間をかけて回収するといった、広告費が勝負になってくるような領域ではなく、科目ごとに一定のペインがあるようなところにサービスを作るということをやっています。
例えば、競合のクリニックでは、AGAや女性用スキンケア、ダイエットなど、すべての診療科目を一つの診察システムで対応しています。予約をすると、同じフローで先生が出てきて診察し、処方を受けるという形です。しかしながら実際には、男性の薄毛治療と女性のダイエット治療では、それぞれ異なる課題やニーズが存在します。
一方、我々の場合は科目ごとに特化したユーザーフローを構築していますため、個別の診察科目ごとに調整がしやすくなっています。そのため、大手が対応しきれていない課題や、科目ごとのペインにマッチしていない部分を当社がしっかりとカバーし、マーケットシェアを拡大していくという戦略を取っています。
Q:ONE MEDICALの事業モデルの競争優位性はどこにあるのでしょうか。
勝俣:まず競合をどこに位置付けるかによりますが、先程お伝えしました通り、オンライン診療を提供している他のサービスと比較しますと、当社は各診療科目に対してよりカスタマイズされた体験設計を行っている点が1つございます。
また、約30万医院ある医療機関、関連事業者がオンラインに移っているという流れの中で、実際にオフラインで診察や処方しているクリニックも一定、市場という意味でいいますと、競合になり得るとも思っています。そこに対しては明確にWeb上で集客を行い、スマホで診察から処方までを完結できる点が、競合優位性となっています。
Q:オンライン診療は、ストック(サブスク)ビジネスに当たるのでしょうか。
勝俣:診療科目によって異なりますが、例えばピルに関しては、リピーターのお客様もいらっしゃいますが、一定の売り切り型モデルも入ってきます。一方で、スキンケアやダイエットなどの分野では、おおよそ6ヶ月から12ヶ月程度継続的に利用いただいています。
こちらも科目によって異なりますが、基本的には売上も含めてユーザーをLINEのアカウント上に貯めていくような形をとっていますので、これまでの累積ユーザーが数十万人アカウント内に貯まっていくと。かつ一定の科目によってはストックが行われているというような形になっていますので、完全な送客ビジネスというわけではなく、一定のストックがあるようなビジネスモデルとなっています。
Q :オンライン診療の診療科目は、現在どの位でしょうか。
石井:決算説明資料でご確認いただけますが、ピル、スキンケア、ダイエット、睡眠障害に加え、あと取り組んでいる科目が複数あるといった状況でございます。
Q:オンライン診療について、主な科目として美容・健康となっていますが、内科などの保険適用の診療は行わないのでしょうか。
勝俣:将来的には保険適用科目も検討していきたいと考えています。一方で現状ですと、オンライン診療市場の中でも自由診療がやはり先に大きくなる傾向にありまして、その後に保険診療の市場が大きくなっていっているのが現状ですので、中長期では保険診療も含めて検討していきます。もう1点、保険診療の場合ですと、やはり厚生労働省などの方針に左右されやすい側面もありますので、まずは比較的事業検証がスピーディーにできる自費のところから事業を大きくしていくという方針で考えています。
Q :「エキサイトお悩み相談室」とONE MEDICAL社の提携病院間(メンタルクリニック)にはシナジーがあるように思いますが、何らかの形で提携されることを考えていらっしゃいますか。
石井:ご質問いただいている通り、実は我々もメンタルヘルスケアとはシナジーがあると考えています。そのため現在、カウンセリングサービスとONE MEDICALとの事業連携というのは検討を進めています。
Q :ONE MEDICAL社の事務所開設数を開示いただきたいです。
勝俣:現在、クリニックは1カ所で行っています。基本的にはその1カ所でオンライン診察を行っており、実際に患者が1カ所に集まって混雑するというわけではありません。複数のオンライン診療を1カ所で集約するシステムを採用しています。一方で、今後拡大するにあたり、新たな提携先を増加させる動きも進めています。
Q :ONE MEDICAL社はHims&Hersを参考に業務を展開しているとのことですが、御社のビジネスモデルでHims社との類似点、異なる点をそれぞれご教示ください。
勝俣:まず類似点としては、診察から購入、配送まで全てスマートフォンを通じてオンライン診療が受けられる点が挙げられます。一方で、米国と日本国内の場合ですと、マーケティング手法や、どのようなサービスが好まれるかにおいても大きな違いがありますため、市場成長の参考として追いつつも、実際の事業展開においては国内の競合というところを見ながら進めています。
Q :Hims社は自社ブランドでの商品パッケージをシンプルかつモダンなデザインで販売されておりブランディングも成功されていると思います。御社も自社ブランドでの製品等販売を行う計画はございますでしょうか。
勝俣:今後の可能性として、科目によってはオリジナルパッケージやブランド作りが必要になると考えています。実際、Hims&Hersのデザインを参考にしたオンライン診療企業は国内にも存在していますが、日本の市場においては、商品のメリットが分かりやすく書かれている方が売れやすかったりですとか、海外とはまた違ったマーケティングの傾向もあったりもしますので、そういったところで各市場、各科目ごとに調査しながら作っていこうと考えています。
Q :ONE MEDICALのマネタイズモデルについて教えてください。社名変更前(アルゴリズム社時代)にはクリニックのドメイン貸しでアフィリエイトメディアを複数運営していたと思いますが、今もその収益は続いていますでしょうか。
勝俣:ONE MEDICALに関しましては、クリニックの立ち上げから支援を入らせていただきまして、送客であったり集客の部分、あとは全体的な診療の支援というところでマネタイズをしています。
クリニックのアフィリエイトメディアに関しましては、コロナ禍の時期に医療市場が盛り上がり、広告費を多く使う企業が増えたことがきっかけで売上が急増しましたが、やはりメディアと送客モデルだけでは安定性に欠けることがわかり、その後にオンライン診療事業に完全にピボットしています。
今回エキサイトホールディングスさんに合流した時点では、すでにオンライン診療事業がメインになっている状態で合流しています。今後も引き続き、オンライン診療事業が売上の大半を占める状態という形で経営を行っていく予定です。
Q:ONE MEDICAL社ではクリニック支援事業を展開されていますが、医療分野は法律規制や広告表現に制約が多い印象です。今後の法改正や広告ポリシー変更へのリスクについて是非お聞かせいただければと思います。
石井:当然、我々としてもかなり意識をしていまして、具体的には、顧問弁護士としてTMI総合法律事務所さんに依頼しており、ONE MEDICAL社の株式取得に関しても、先方の医療専門の弁護士チームが担当し、詳細に精査していただきました。その上で、TMIさんからの意見を受け、適切に対応しているというところになります。
また、そもそもエキサイトでも2021年からEMININALという歯科矯正サービスを展開しており、医療分野に関する知見がすでにありましたので、こちらも法に沿った形で事業を運営しているというところになっています。法改正につきましては、予測できない部分もありますが、改正やポリシーの変更があった場合にはしっかりと対応していく所存です。
Q:ONE MEDICAL社の23年2月期売上約35億円、営業利益13億円から24年2月期売上14億円、営業利益マイナス1.8億円と下がった理由は何でしょうか。
勝俣:もともとONE MEDICALとしてメディア事業を展開していまして、主に美容医療系の送客メディアを運営していました。このメディア事業は、特に2023年2月期に一時的に収益が急増したため、そのタイミングで採用拡大やその他の費用が増加しました。
2024年2月期に関しましては、メディア事業からオンライン診療事業へ完全にピボットする過程で売上自体が減少したというのはもちろんあるんですけれども、人員体制の変更などによる費用でしたり、そういった費用も発生したため、最終的にはマイナスという形にはなっています。
現状ですと完全にピボット自体は終わっておりまして、エキサイトホールディングス傘下に入った時点で、オンライン診療事業がメインという形になっていますので、ここの業績の増減に関しては、過去のピボット時の影響というように考えていただけたら分かりやすいかと思います。
Q :ONE MEDICALの成長見通しは、ピルの提供によるものが主になるとのお考えでしょうか。
石井:仰る通りピルが主体になって伸びてきたという側面はございますが、ダイエットやスキンケア等に関しましても昨年から診療科目を追加しており、成長を見通しています。今後につきましては科目の拡張を行いながら多くの科目を作り、その積み上げで成長を目指していきたいと考えています。